インタビュー

「倒置法のストーリー」で東急電鉄を惹きつけた、WAmazingのピッチ資料を作り上げたプロセス

WAmazing加藤社長×KUROKO木下

訪日インバウンド旅行客の数は年々増加してきていますが、インバウンド旅行者に対してのアプローチにはまだ改善の余地があります。そんな課題に取り組むベンチャー企業がWAmazing株式会社(以下、WAmazing)です。

KUROKOではWAmazingのベンチャーピッチや資金調達を、プレゼン資料を通してサポートしてきました。今回はWAmazing 代表取締役社長CEO 加藤 史子氏と、KUROKOを運営するリライアンス・データ株式会社の取締役クリエイティブディレクター 木下 翔太にて対談を実施。

社運をかけたプレゼンテーションに向けて資料を作りこむプロセスや、通常のベンチャーピッチと大企業向けのプレゼンの違いなどについて語っていただきました。

 

お話を伺った方

WAmazing株式会社
代表取締役社長CEO 加藤 史子

リライアンス・データ株式会社
取締役クリエイティブディレクター 木下 翔太

 

数あるプレゼンの中でも印象に残った、ある大企業へのピッチ

 

― 今までどのようなプロジェクトを一緒にやってきたのでしょうか。

加藤:
今まで、色々やってきましたね

木下:
はい、WAmazingさんとは2017年からもう2年間以上お付き合いがあって、ピッチイベントや中期経営計画資料などをお手伝いしてきました。

 

― KUROKOにプレゼン資料の作成を依頼したきっかけを教えていただけますか?

加藤:
最初は「ICCサミット スタートアップ・カタパルト*」のタイミングからでしたね。ベンチャー起業家仲間からの紹介がきっかけです。

※スタートアップの登竜門と呼ばれている国内最大級のベンチャー企業向けピッチイベント。

 

スタートアップ・カタパルトでのプレゼンテーション

 

― 今までで、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

加藤:
東急電鉄さんのアクセラレートプログラムですかね?

木下:
そうですね、東急さんですね。

 

ベンチャーピッチと大企業のアクセラピッチの違い

 

― どのようなところが特徴的だったのでしょうか?

加藤:
「ICCサミット スタートアップ・カタパルト」や「B Dash Camp Pitch Arena」など、いわゆる普通のベンチャーカンファレンスのピッチは、自分たちの事業をどう魅力的に見せるか、ストーリーをどう語るか、という点が大事です。そのために自分たちが実現したい世界や、それを推進するチーム、事業のトラックレコードを語るプレゼンになります。

 

WAmazing加藤社長×KUROKO木下

 

東急電鉄さんのアクセラレートプログラムの場合はそれと違って、大企業とベンチャーが連携してオープンイノベーションに取り組むことが目的なのですよね。なのでWAmazingの事業の魅力はもちろん話すのですが、それはぎゅっと凝縮した上で、相手の会社や事業のことをしっかり押さえることが重要になります。

相手企業はどういう歴史や事業を持っていて、どうやって成長してきた企業なのか、そして「今後の成長戦略において、こんなところに課題がないでしょうか。それをWAmazingと一緒に取り組みませんか」という観点から語るかたちになります。

イメージとしては倒置法に近いですね。普通のベンチャーピッチは「ユーザーペイン、自社の事業の話」→「ソリューション、市場規模など」という順番で話しますが、私は、大企業向けのピッチでは相手の話から始めます。

 

スライドサンプルWAmazingが東急電鉄のことを語るスライド

 

木下:
その企業のコンサルをする感じですよね。資料作成のためにお話しを伺っている時もよく仰っていたので印象に残っています。

加藤:
大企業には新卒からプロパーで長く勤めている人が多いので、自社のことはすごく理解しているし、自社愛も強い。なので、ベンチャーピッチだとしても、まずは自社のことを語った方がアテンションを取って惹きつけられると考えました。

 

― 具体的にはどのようなストーリーに落とし込んだのでしょうか?

加藤:
東急電鉄のビジネスは、実は電車屋さんじゃないんですね。東急は私鉄の中でも売上高トップクラスの企業ですが、セグメント別では鉄道比率が低くなっています。

つまりどういうことかと言うと、東急沿線に宅地やオフィスを開発して、スポーツクラブ・オフィス・住宅・百貨店・ホテルやレジャー施設などを開発して、沿線住民の方々の人生を通してサービス提供をするようなビジネスモデルなんです。毎日、通勤・通学する沿線の人と深く繋がっているから、実現できる事業です。

一方で、インバウンドの増加にともない当然、東急沿線にも外国人は増えているのですが、定期券を持って毎日通勤・通学する東急沿線に住む人たちと比較して、インバウンド旅行客と深く繋がるというのは難易度が高いため、ここは将来的な課題になると思われました。そこをWAmazingがSIMカードをフックに繋げますよ、というストーリーでお話ししました。

 

一番大変なのはストーリー作り

 

― 資料を作る上で一番大変だったことは何ですか?

加藤:
私はデザインをしていないので、やっぱりストーリーを作るところが一番大変でしたね。元々ぼんやりとしたイメージは頭の中にあったのですが、表現に落とすのが大変でした。

 

― その状態から、どのようなプロセスで資料作成を進めたのでしょうか?

加藤:
頭の中にぼやっとあるものを、木下さんに話しながら整理していく感じです。

木下:
そうですね、一時期はこちらのオフィスの会議室にも結構頻繁にお伺いしてましたね。

加藤:
KUROKOさんにお願いした時点で、私は東急さんと10回以上ミーティングを重ねていたので、東急さんについての理解が深まっていました。それを木下さんに話して説明していくと、木下さんから質問が出てくるので、それに対して答えていくと考えが整理されていきました。

木下:
壁打ちですよね。壁打ちをすると第三者の視点も入って事業内容や構想が整理されるので、他の企業さんにも評価いただいてます。

 

紙に描いたアイデアをスライドに落とす

 

木下:
あと加藤さんの場合は、紙に書いて説明していただくこともよくあって、その方法だとプロセス立てて理解できるので、それをスライドに落とすだけで進められることも多かったですね。

加藤:
私の場合は、ストーリーを考えるときにPowerPointに向かうと考えられなくなるんですよ。なので、カレンダーの裏みたいな大きい紙に絵を描いて考えていくことが多いですね。

木下:
私その写真何枚も持ってます(笑)
頭の中のイメージを紙に描いてもらえると理解が早いので助かりますね。PowerPointでのデザインまで作ってもらうと時間がかかってしまうので、手書きはお互い時間削減になって助かります。

 

紙に描いたイメージ紙に描いたイメージ

 

木下:
ある程度素材が揃うと、どの順番だと話しやすいかを考えて、サンプルなどを使って順番やスライドの構成を提案します。

加藤:
私が具体案なく、ただダラダラ話す中で、木下さんが「これとかどうですか?」と提案してくれるので助かりますね。

 

ピッチ資料で重要なのは「細部に神が宿った」ビジュアル

 

ー 資料を頼む時に特にポイントになっている部分は何ですか?

加藤:
やっぱりビジュアルが大事ですね。

私は普段からプレゼン資料を作ることが多くて、講演資料などは自分で作ることもあります。講演のように30~60分話す場合であれば、スライドのビジュアルにそこまでこだわらなくてもプレゼンはなんとかなります。

ただ、ベンチャーピッチの場合は時間が短いので、長々と話し言葉で補足することができません。言葉もキーワードだけになるので、ビジュアルも、ぱっとみて視覚的に一瞬で理解できる、エッセンスを凝縮したビジュアルが大事なんです。そのためには、いわゆる「細部に神を宿らせる」ということが必要です。 そこは私は門外漢なので、プロフェッショナルな木下さんに頼るということになります。

 

ー KUROKOでは制作時にビジュアル面でどういうことを意識していますか?

木下:
スライドで企業の色を出せるようにデザインするようにしています。企業を体現できるカラーテイストはもちろん、フォントやR(カーブの角度)なども調整しています。

また、ビジュアル+1メッセージで伝わる資料にこだわっていて、例えば写真を一面に使ったりして、話している内容を視覚的にも一瞬で理解できるようなスライドにするように心がけています。

 

WAmazing加藤社長×KUROKO木下

 

ピッチには他のプレゼン資料とは違うノウハウが必要

 

― その他、プロジェクトの中で印象に残っていることは?

加藤:
KUROKOさんはメッセージを拾うのが上手いなーと思っています。

例えば、最初のプロジェクトの時に私がWAmazingの事業の説明をしている中で「手の中の旅行エージェントみたいなものなんですよ」って言ったら、KUROKOの泉さんが「その言葉、良いですね。それ、プレゼンでも使いましょう!」と反応してくれたんです。ビジュアルだけではなく、客観的な立場から、メッセージやキーワードの抽出もしていただけるのは助かります。

初回は資料づくりだけではなく、実際のピッチを想定したふるまいや、声の出し方もアドバイスいただきました。聴衆をどう惹きつけるか、最初の切り出し方をどうするかなども考えてくださいました。 ベンチャーピッチって、たった5分くらいなのに、その長さでも聴衆は飽きていくんです。だから「もっと早めの段階で動画に入った方が良い」とか「最初は、SIMの箱を手に持って、高く掲げて、アテンションを惹きつけましょう」という風に提案いただきました。

もちろんICCのピッチはWAmazingの事業説明がメインなんですけど、最初から「自分語り」されても聴衆は飽きてしまう。まず、どうやって聴衆をこちらの話に引き込むのか、その後は、飽きずに最後まで聞いてもらうのか、そういう設計から一緒に考えていただけました。

 

WAmazing加藤社長×KUROKO木下

 

木下:
私は加藤さんとお仕事させていただく中で色々メモしていたことがあるんですけど、その中でも「(大企業向けのピッチでは)その事業会社と契約したプロのコンサルタントになった気持ちで考えることが重要」という加藤さんの言葉が印象に残ってます。

他の企業さんのピッチをお手伝いする時も、そのあたりを含めてアドバイスすることで結果を出していただけている面もあると思います。

 

― 加藤社長、本日はありがとうございました!

 

さいごに

ベンチャー企業のピッチと一言に言っても、オーディエンスやカンファレンスの特徴に合わせてストーリーや強調するポイントを変える必要があるんですね。

WAmazingの加藤社長にプレゼン必勝法についてインタビューした記事もあるので、こちらも合わせてお読みください。

 

WAmazing加藤社長
プレゼンは準備が命!WAmazing加藤社長が語る、スタートアップのプレゼン必勝法「ICCサミット スタートアップ・カタパルト」優勝、「B Dash Camp Pitch Arena」優勝、東急電鉄を始めとする複数社か...

 

尚、KUROKOではベンチャーピッチ資料の制作サポートを行っています。

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~ これまでの支援イベント(一部抜粋) ~

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■ B Dash Camp
■ Slush Aisa
■ Rising EXPO
■ AWS Global Summit
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■ World Economic Forum
■ ECHELON
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