IR・決算

●●%で何ができる?覚えておきたい株式会社の議決権割合が持つ意味

よくニュースなどで「A社がTOBによりB社の株式の70%を取得し、連結子会社化」などの説明がありますよね。

なんとなく過半数や3分の1以上などの数字に意味があることを知っている人は多いと思いますが、実は他にも色々と意味のある数字があるんです。

 

ということでこの記事では、覚えておきたい株式(議決権)の所有割合ごとの意味を紹介していきます。

 

※注:本記事の内容は執筆時(2020年2月10日)時点の情報を基にしています。法律については変更になる可能性及びケースに応じて解釈が異なる可能性があるため、実際に権利行使等を行う際はご自身で調査するか、弁護士などの専門家に相談するなどしてください。

 

株式と議決権に関する前提

日本の上場企業においては、株主総会の議決権数は、株式1株ごとに1個の議決権というのが基本になっています。

つまり、特別な事情が無ければ、普通株式にはどの株であっても同じ数の議決権が付与されているため、

<div class=”simple-box7″><p>所有株式比率≒議決権比率</p></div>

となります。

 

特別な事情とは以下のような状況のことを指します。

  1. 会社が保有する「自己株式」
  2. 相互保有株式
  3. 議決権制限株式
  4. 特定の株主から、会社が株式取得する場合、それを議決する決議
  5. 単元未満株式

 

よくある状況で言えば、会社が自社の株式を保有している場合、その分は議決権の分母から除かれることになっています。

つまり、A社の発行済み株式数が10,000株で、A社がそのうち2,000株を保有している場合、議決権投票は残りの8,000株を母数として実施されることになります。

 

ここから下は、特別な事情なども反映した「議決権」ベースの持ち分を前提に話を進めていきます。

※尚、便宜的に小数点以下は重要な閾値を超えるように繰り上げもしくは繰り下げで記載しています。

 

特別決議・普通決議に関係する議決権比率

67%=特別決議の単独決行

議決権の3分の2以上を保有すれば、株主総会の特別決議を単独で成立可能となります。

 

特別決議では

  • 定款の変更
  • 監査役の解任
  • 合併・会社分割・株式交換・株式移転の承認決議

などが対象になっており、議決権の3分の2以上の保有と言うのは、実質的にほぼ全ての経営判断を独断で行える状態となります。

 

51%= 普通決議の単独決行

議決権の半分超を保有すれば、株主総会の府鬱決議を単独で成立可能となります。

特別決議に関しては単独で成立されせられないものの、基本的には経営権を保持している状態とみなされます。

 

普通決議では

  • 取締役・監査役・会計監査人の選任と解任
  • 取締役の報酬の決定(定款で定めていない場合)
  • 決算の承認

などが対象となっており、会社の解散や合併などの特別決議以外の項目に関しては、かなりの部分の決定をできるようになっています。

 

50%=普通決議の単独阻止

50%を保有していれば、株主総会の普通決議を単独で阻止することが可能になります。

半分より1%でも多く持っていれば普通決議を単独で成立させられるのですが、50%ぴったりだと阻止しかできない点に注意が必要です。

 

34%=特別決議の単独阻止

こちらは3分の2保有の裏返しで、特定の株主が議決権の3分の1以上を保有すれば、株主総会の特別決議を単独で阻止することが可能になります。

未上場企業はもちろん、市場に株式を公開している上場企業でも、創業者とその関係者などで3分の1以上の議決権をキープしたまま経営しているケースは多くあります。

 

連結会計に影響する議決権比率

100%=完全子会社

特定の会社が株式の100%を保有している場合、保有している会社は親会社、被保有会社は完全子会社となります。

完全子会社の場合、当然ながら実質的な支配権は親会社にあり、連結決算では子会社の業績全てが親会社と連結されます。

 

また、100%保有の完全子会社になれば連結納税が可能となり、税務上も親会社と連結して処理することが可能になります。

 

51%以上=連結子会社

あくまで原則としてですが、過半数の議決権を保有する場合は連結子会社として扱われ、子会社の財務数値を含めた連結決算を出す必要があります。

尚、議決権の保有割合が51%に満たない場合でも、実質的に経営を支配していると判断できる場合には、連結子会社として扱われます。

 

20~50%=持分法適用会社

非連結子会社の中でも、持ち分比率が20%以上で経営に関与している場合、持分法適用会社として扱われます。

持分法適用会社の場合、連結子会社と異なり、資産や負債などの項目は連結されず、持ち分に応じた損益が親会社の決算に組み入れられる形になります。

 

少数株主権に関連する議決権比率

少数株主権とは、これまでに紹介してきた大きな比率には満たないものの、一定割合または一定数以上の株式を保有する株主が行使できる権利のことを指します。

少数株主権には10を超える権利があるため、ここではその中でも主要なものだけをご紹介します。

 

10%の少数株主権=募集株式発行における株主総会請求権

議決権の10%を保有していれば、支配株主が変わることになる募集株式を発行するときに、株主総会での決議を要求することができます。

 

3%の少数株主権=会計帳簿閲覧請求権

3%の保有で会計帳簿の閲覧を請求できるようになります。

上場企業であっても決算として公開されている財務数値は一部なので、より細かい数値が確認できるようになります。

 

1%の少数株主権=株主提案権

1%の議決権を保有していれば、一定の事項を株主総会の目的(=議題)とすることを請求することができます。

これを受けた会社側は、株主総会に付議するための要件を満たすものであれば総会で取り上げる必要があります。

 

さいごに

株式(≒議決権)は持ち分比率に応じて様々な意味を持ちます。

また、これらの権利や義務は会社法、金融商品取引法、企業会計基準など別々の法律がベースになっており、すべてを完璧に把握するのはかなり難しいと言えるでしょう。

ただ、企業経営上で重要な数値を把握しておくことで株式会社の仕組みやコーポレートガバナンスへの理解が深まるので、ぜひ重要な数値は覚えておくようにしましょう。

 

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